リトレースメント(押し・戻り)はトレンドの中の休憩であり、フィボナッチ水準はその休憩が止まりやすい場所です。取引しているスイングの高値と安値を入力すると、23.6%、38.2%、50%、61.8%、78.6% の五つの水準を米ドル/オンスで表示し、それぞれの端点からの距離も算出します。
計算はすべて一つの測定から始まります。スイングの大きさです。高値から安値を引けば、価格が実際に動いた値幅が出ます。その値幅に五つのフィボナッチ比率を掛け、上昇局面では高値から引き、下落局面では安値に足します。移動平均も出来高も平滑化も使いません。
「方向」の選択が、どちらの端点を基準にするかを決めます。上昇を選べば五つの水準はすべて高値の下に並び、78.6% が最も深い位置になります。下落を選べばすべて安値の上に並び、78.6% が最も高い水準になります。同じ高値と安値を両方の設定に入れると、鏡像関係にある二本の物差しができます。取引しているトレンドに合うのは、そのうち一本だけです。
金が 4,020 ドルから 4,180 ドルまで上昇し、その後反転したとします。値幅は 160 ドルです。23.6% の押しは 0.236 × 160 = 37.76 ドルなので、最初の水準は 4,142.24 ドルになります。61.8% は 0.618 × 160 = 98.88 ドルで、黄金比の水準は 4,081.12 ドルです。下の表はこのスイングの全水準を両方向で並べたもので、基準の入れ替わりが確認できます。
| 水準 | 上昇後の押し | 下落後の戻り | 高値からの距離 |
|---|---|---|---|
| 23.6% | $4,142.24 | $4,057.76 | $37.76 |
| 38.2% | $4,118.88 | $4,081.12 | $61.12 |
| 50.0% | $4,100.00 | $4,100.00 | $80.00 |
| 61.8% | $4,081.12 | $4,118.88 | $98.88 |
| 78.6% | $4,054.24 | $4,145.76 | $125.76 |
標準 1 ロット(100 オンス)で考えると、23.6% と 61.8% の間は 1 オンスあたり 61.12 ドル、エクスポージャーにして 6,112 ドルです。61.8% の外側に損切りを置くと 1 ロットで約 9,888 ドルのリスク。同じ損切りを 78.6% に移すとリスクは 12,576 ドルに増えるのに、価格の余裕は 26.88 ドルしか増えません。損切りの位置と建玉サイズは必ず一緒に決めるべきで、それがポジションサイズ計算ツールの役割です。
これらの数字は恣意的ではありませんが、自然法則でもありません。由来はフィボナッチ数列 — 1、1、2、3、5、8、13、21、34 — で、各項は直前の二項の和です。ある項を次の項で割ると 0.618 に収束し、二つ先の項で割ると 0.382、つまり 1 − 0.618 になります。23.6% は 0.618 の三乗、78.6% は 0.618 の平方根です。50% はフィボナッチとは無関係で、ダウ理論と市場慣行から加わったものですが、「半分戻した」という心理的な線があまりに目立つため残っています。
この数字の組が金で機能する理由は数学ではなく、注文が水準の周りに集まることです。リトレースメント水準は広く公開されているため、損切り、指値、オプションの権利行使価格が自然とその周辺に溜まります。さらに、61.8% が直前の高値、4,100 ドルのような節目、50 期間移動平均と重なるといった合流があれば、そのゾーンには実際の流動性が存在します。比率そのものより、そちらのほうが水準を監視する理由として説得力があります。
リトレースメントは押しが「どこで終わりうるか」を示すもので、「どこで必ず終わるか」ではありません。関心を持つ地点の地図として扱い、各水準を価格の動きに確認させるか、否定させるかします。
一つ目は後からの引き直しです。価格が水準を超えるたびに基準を動かせば、どの水準も失敗しません。最初に一度だけ引き、間違えることを許容してください。二つ目は時間足の混在で、4 時間足の 61.8% と 5 分足の 61.8% は別物です。三つ目はカレンダーの無視。FRB の会合を挟んでリトレースメントがトレンドラインより持ちこたえるわけがありません。
いずれも水準を予測的にするものではありません。計算ツールは算術で、算術は方向について意見を持ちません。押しが終わったのか、トレンドが続いているのかは教えてくれません。取引を整理するために使うもので、取引を生成するためではありません。エントリーゾーン、無効点、目標、建玉サイズという順序です。金取引アカデミーにはこの判断の枠組みがあり、リアルタイムの金チャートでは価格がいまどの水準にいるかが分かります。
最も注目されるのは 23.6%、38.2%、50%、61.8%、78.6% の五つです。とくに 38.2% と 61.8% に注文が集まりやすく、50% は心理的な中間線であって純粋なフィボナッチ比率ではありません。
いいえ。数列の隣接項の比から 23.6%、38.2%、61.8%、78.6% が得られますが、50% はダウ理論と市場慣行によるものです。ほとんどのリトレースメントツールに搭載されているのは、トレーダーが見ているからで、数列から導かれるからではありません。
実際に取引している推進波の始点と終点、通常は現在の押しを生んだ直近のきれいなスイングを使います。ヒゲと終値のどちらで測るかを統一し、取引の時間足と同じ時間足で見てください。価格が反応した後に引き直すのは避けます。
おすすめしません。水準は押しが止まりうる場所を示すだけで、止まるかどうかは示しません。構造、終値での確認、一定の損切り幅を組み合わせ、建玉は事前に計算してください。