「金を買いたい」と思って最初にぶつかるのは、商品の多さです。純金積立、店頭の地金、金ETF、海外ETF、そしてXAUUSD。どれも「金」ですが、コスト構造も税制も、向いている保有期間も違います。
この記事では、2026年10月21日時点の実際の金価格とドル円レートを使い、5つの方法を同じ10万円という条件で並べます。最後に、最初の1取引をどの順番で進めればいいかまで書きます。
まず数字を押さえます。以下は2026年10月21日 08:30 JST時点のXAU/USD気配値と、同日のドル円レート(1ドル=158.44円)から計算した値です。
| 項目 | 数値 | 補足 |
|---|---|---|
| XAU/USD 売値(Bid) | 4,116.32 ドル | 1オンスあたり |
| XAU/USD 買値(Ask) | 4,116.98 ドル | 1オンスあたり |
| スプレッド | 0.66 ドル(0.016%) | Ask − Bid |
| 直近24時間の高値/安値 | 4,155.55 / 4,111.72 | 値幅 43.83ドル |
| 直近24時間の変化 | −0.41% | 4,133.52 → 4,116.65 |
| 直近2週間のレンジ | 4,076.23 〜 4,221.53 | 振幅 約3.5% |
| 円建て(1グラム) | 20,970 円 | 税・手数料込みでない理論値 |
| 円建て(1オンス) | 652,248 円 | 31.1035g × 20,970円 |
出所:XAUAD 気配値(Swissquote)/為替は公開レート。価格は常に動くため、実際の取引時には必ず最新値を確認してください。
ドル建ての金価格を円建てに直す計算は1本の式で足ります。
手計算が面倒な場合はグラム・オンス換算ツールに数値を入れるだけで済みます。
ここで押さえておきたいのは、円建て金価格は「金の値動き」と「円の値動き」の合計だということです。金がドル建てで横ばいでも、円安が進めば円建て価格は上がります。逆に円高になれば、ドル建てが上がっても円建てでは減ることがある。日本の投資家にとって、金は「ドル資産を持つこと」に近い意味を持ちます。
| 方法 | 最低額 | 主なコスト | 保有期間の相性 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
| ① 純金積立 | 月1,000円〜 | 売買スプレッド往復 6〜10% | 5年以上 | 手間をかけたくない人 |
| ② 店頭地金・コイン | 数万円〜 | スプレッド 8〜12% + 消費税10% | 10年以上 | 現物を持ちたい人 |
| ③ 金ETF(1540) | 約2万円〜(1口) | 信託報酬 年0.4%前後 | 1〜10年 | コスト重視の長期派 |
| ④ XAUUSD(CFD) | 証拠金6,000円〜 | スプレッド 0.016% + 保有金利 | 数分〜数日 | 短期の値動きを取る人 |
| ⑤ 金鉱株・金関連株 | 数千円〜 | 経費率 年0.4〜0.5% | 3年以上 | 値動きの大きさを狙う人 |
この表で最も重要なのは「コストの桁が2つ違う」という点です。地金の往復コストが10%なのに対し、ETFは年0.4%、CFDは1回0.016%。同じ「金を買う」でも、選ぶ商品によって年間リターンが数%変わります。
田中貴金属、三菱マテリアル、住信SBIネット銀行などが提供する、毎月定額で金を買い付ける仕組みです。買付手数料は無料のことが多く、1,000円から始められます。
店舗やオンラインで1g単位の地金を買う方法です。手元に残る安心感は最大ですが、コストも最大になります。
長期で持つなら悪くない選択ですが、「売買を繰り返す道具」ではありません。1回売買するたびに10%前後が消えることを覚えておいてください。
証券口座で買える上場投資信託です。代表は1540(純金上場信託・現物国内保管型)。国内の金庫に現物が保管され、円建てで取引されます。
| 銘柄 | 通貨 | 経費率 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 1540(純金上場信託) | 円 | 年0.4%前後 | 国内保管・円建てで完結 |
| GLD(SPDR Gold Shares) | ドル | 年0.40% | 世界最大の金ETF、流動性が高い |
| IAU(iShares Gold Trust) | ドル | 年0.25% | GLDより低コスト |
| GLDM | ドル | 年0.10% | 低コスト特化型 |
1540の強みは円建てで完結すること。ドル転の手間も為替手数料も不要で、円安が進めば基準価額が上がります。海外ETFはドル転と為替コスト(片道0.1〜0.5円/ドル程度)がかかるうえ、米国資産として相続税の対象になる点に注意が必要です。
XAUUSDは「金1オンスのドル価格」を売買する銘柄です。CFD(差金決済取引)なら、現物を持たずに価格の上下だけを取引できます。
| ロット | 金の量 | 想定元本(円) | 1ドル動いた時の損益 |
|---|---|---|---|
| 0.01 | 1オンス | 652,248 円 | 158 円 |
| 0.10 | 10オンス | 6,522,480 円 | 1,584 円 |
| 1.00 | 100オンス | 65,224,800 円 | 15,844 円 |
10倍のレバレッジなら、0.01ロットの必要証拠金は約65,000円。100倍なら約6,500円です。ただしレバレッジは損失も同じ倍率で増やすので、「証拠金が少なくて済む」=「リスクが小さい」ではありません。実際のロットごとの損益は損益計算ツールで円換算できます。
1日の値幅は直近24時間で43.83ドル。0.01ロットなら±約6,900円、0.1ロットなら±約69,000円の振れになります。0.1ロットで10万円の口座を持つと、1日で口座が7割減り得るということです。
金鉱株(バンガード・ゴールド・マイナーズETFのGDXなど)は金価格に連動しますが、連動率は1倍ではありません。金価格が10%上がると鉱山会社の利益は数十%増えることもあり、逆に10%下がれば急減します。コスト構造・操業リスク・為替・株全体の地合いが重なるため、「金の代替」ではなく「金に連動する株式」として扱うのが正確です。初心者が最初に選ぶ商品ではありません。
金価格が変わらないと仮定して、コストだけを並べます。
| 方法 | 1年のコスト実額 | 損益分岐点 |
|---|---|---|
| 純金積立 | 6,000〜10,000 円 | +6〜10% 上がらないとプラスにならない |
| 店頭地金 | 8,000〜12,000 円 | +8〜12% |
| 1540(金ETF) | 約 400 円 | +0.4% |
| GLD | 約 400 円 + 為替 | +0.4〜0.8% |
| XAUUSD(短期) | 1往復 約 30 円 | +0.03% |
この表が、この記事で一番持ち帰ってほしい部分です。「金が上がったのに儲からない」の原因は、ほぼコストです。長期で持つほどETF、短期で回すほどCFD。商品選択を間違えると、相場観が正しくても負けます。
金は24時間動きますが、値動きの大きさは時間帯で3倍以上変わります。日本時間での目安は次の通りです(サマータイム期間)。
| 時間帯(JST) | 市場 | 値動きの特徴 |
|---|---|---|
| 07:00〜09:00 | オセアニア・東京寄り前 | 薄い。スプレッドが広がりやすい |
| 09:00〜15:00 | 東京 | 小さい。レンジになりやすい |
| 16:00〜21:00 | ロンドン | 中程度。欧州の指標で動く |
| 21:30〜翌01:00 | ロンドン・NY重複 | 最大。1日の値幅の半分以上がここ |
| 01:00〜06:00 | NY後半 | FOMCや指標発表で急変しやすい |
取引時間は月曜07:00から土曜06:00まで(サマータイム)。冬時間は1時間ずつ後ろにずれます。短期で取るなら21:30〜01:00、長期で持つなら時間帯を気にする必要はありません。
注意したいのは指標発表の前後です。米雇用統計(毎月第1金曜 21:30 JST)、CPI(月1回 21:30 JST)、FOMC(年8回 翌03:00 JST)の直後は、数秒で20〜40ドル動くことがあります。この時間に損切りが近い位置にあると、想定より不利な価格で決済されます(スリッページ)。
金の価値は「利息を生まない」ことにあります。だからこそ、金利が下がる局面や、通貨への信認が揺らぐ局面で買われます。株式のように利益を生む資産ではないので、値上がり益を狙うというより、他の資産が下がるときの緩衝材として機能します。
実務的には、金融資産の5〜15%を金に置く形が一般的です。0%だと通貨リスクを丸ごと抱え、30%を超えると金価格が横ばいの期間に機会損失が大きくなります。10%前後から始めて、半年ごとに比率を見直すのが現実的です。
直近12営業日(10月9日〜10月20日)の実際の値動きで比べます。期間の始値は4,179.53ドル、平均終値は4,162.21ドル、最新値は4,116.65ドル、期間中の安値は4,076.23ドルでした。
| 買い方 | 取得単価 | 現在(4,116.65)との差 |
|---|---|---|
| 10/9に一括 | 4,179.53 ドル | −1.5% |
| 12回に分割(期間平均) | 4,162.21 ドル | −1.1% |
| 安値で買えた場合 | 4,076.23 ドル | +1.0% |
この数字が示すのは、分割買いが「魔法」ではないということです。下落局面では分割でも平均単価は下がりきらず、損失は小さくなる代わりに、反発したときの利益も小さくなります。分割の本当の意味は利益を増やすことではなく、「1点の判断ミスで全部を失わない」こと。金のように数か月で20%動く資産では、この差が効きます。
では、どうやって買うタイミングを決めるか。実務的には「毎月同日に同額」で十分です。相場観を持つ必要がなく、判断の回数を減らせる分、続けられます。続かない運用計画に価値はありません。
| 商品 | 所得区分 | 税率 | 申告 |
|---|---|---|---|
| 地金・純金積立 | 譲渡所得(総合課税) | 所得に応じた累進課税。5年超保有は所得金額の1/2が課税対象 | 給与所得者は年間20万円超で必要 |
| 金ETF(1540) | 上場株式等の譲渡所得等 | 20.315% 分離課税 | 特定口座(源泉徴収あり)なら不要 |
| XAUUSD(CFD) | 先物取引に係る雑所得等 | 20.315% 分離課税 | 年間20万円超で必要(給与収入2,000万円以下) |
地金は総合課税なので、給与所得が高い人ほど税率が上がります。同じ10万円の利益でも、ETFやCFDなら20.315%で固定される点は見落とされがちです。この表は一般的な説明であり、個別の税務判断は税理士に確認してください。
Q. 金投資はいくらから始められますか?
A. 純金積立なら月1,000円から、金ETFは1口2万円前後から、XAUUSDなら0.01ロット(証拠金6,000〜65,000円)から可能です。ただし少額すぎるとスプレッドの比率が重くなるため、月5,000〜10,000円以上が現実的です。
Q. 純金積立と金ETFはどちらが有利ですか?
A. コストはETFが有利です。積立は往復スプレッド6〜10%、1540は信託報酬0.4%前後。ただし積立は1,000円から始められ、50g以上で現物を受け取れる利点があります。少額は積立、まとまった額はETFという使い分けが合理的です。
Q. 金投資の税金はどうなりますか?
A. 地金は譲渡所得の総合課税(5年超保有で1/2課税)、金ETFとCFDは20.315%の分離課税です。給与所得者は年間利益20万円超で確定申告が必要になります。ETFは特定口座(源泉徴収あり)なら申告不要です。
Q. XAUUSD(CFD)は初心者に向いていますか?
A. 少額で値動きを取れる点は有用ですが、レバレッジは損失も同じ倍率で増やします。まず0.01ロットで、1回の損失を口座資金の1〜2%に抑える練習から始めてください。生活費や借入金を証拠金にしないことが前提です。
Q. 金は今から買っても遅くないですか?
A. 高値かどうかは誰にも分かりません。金融資産の5〜15%を金で持ち、3〜6回に分けて買うなら、タイミングのリスクは平均化できます。2026年10月時点は1オンス4,116ドル、直近2週間で4,076〜4,221ドルと上下約2%の環境です。